夏恵
僕はシャワーを浴びて夏恵の残り香を洗い流した。
別に誰かに悟られる事を考えているからではない。
禊ぎ
僕は夏恵から現実へ戻る為の禊ぎをする。
夏恵の声が聞きたい。
夏恵の香りが嗅ぎたい。
夏恵の唇に唇を重ねたい。
夏恵のあの柔らかくしなやかな体を抱きたい。
そして夏恵の中にいざなわれたい。
次々に湧いてくる思いを少し熱めのシャワーで洗い流す。
滑稽な禊ぎをする。
僕は禊ぎを終えると、いつもの様に朝食を取らず車へ向かう。
アパートから駐車場までの道沿いを夏休み中の部活の練習だろうか、高校生達が三人楽しげに自転車で走る。海沿いの街とは少し違う強い日差しが僕を照らす。
風は無く乾いている。
ここは現実だ。