夏恵
『清水さんとこの社長が亡くなった・・・・お前が行った次の日だ。』
僕は部長の言ってる事の意味を理解するのに時間が掛かった。
部長の言葉は僕の中で一切の現実を帯びなかった。
あのくすんだ外壁の中で、おそらく娘であろう芳江という女性と一緒に、『切捨て』と言っても何ら不思議ではない話をしに行った僕を、冷たい麦茶と労いの言葉で迎えてくれた、あの色黒の中年が亡くなった。
『取り敢えず今回、社長も俺も他の用事でいけないから会社からの香典、お前が持っていってくれ。』
部長は僕の理解をよそに話し続ける。
僕は呆然と部長の口の動きを眺める。
『・・・自殺らしいぞ。』
部長はこちらから目線をはずして呟いた。