夏恵
アネモネ
『・・・まだ清水さんのとこか?』
『いえ・・・今出たとこです。』
『そうか何時頃戻ってこれる?』
『・・・・今日はこのまま帰らせてもらっていいですか?・・・体調が悪くて・・・』
『・・・そうか・・うぅーん・・まぁいいだろう。ゆっくり休め』
『・・・はい、すいません。』
僕は部長に明かに嘘をついた。
いつもなら怒鳴り散らすだろうが、今日は誤魔化しが効くような核心が僕にはあった。
僕は静かに携帯を切り胸ポケットにしまった。
『・・・気づかなかったぁ!!トモ体調悪かったんだぁ!!』
そう言って助手席の夏恵はニヤニヤと笑う。
僕も少しニヤけながら夏恵に目をやる。
夏恵は浜辺によく映えそうなノースリーブの花柄のワンピースを着ていた。
僕は花の名前はよく分らないが淡い空色の花は夏恵にはピッタリの柄だった。