夏恵
明子は飲み干した僕のコーヒーカップを見て、すかさずコーヒーメーカーのコーヒーを注ぎ入れる。
『・・・トモユキ』
『・・・ん?』
『あんまり無理しないでね・・・』
『・・・ああ』
明子はコーヒーを注ぎながら言う。
僕はコーヒーの注がれるコーヒーカップを見つめながら、御座なりに答える。
明子は何に対して、そう言ったのかを僕が窺い知る事は叶わないが、彼女は僕に不安を感じている。
実に可笑しな話だ。
僕は彼女の変化に不安を感じたが、彼女は僕の変化に不安を感じていた。
そしてその不安は昨夜の彼女を生んだ。
僕は明子の注いだコーヒーを飲み干し仕度を始める。
明子はいつもの様に食器を手際良く片付けて自分の仕度を始める。