夏恵

社奴


新幹線の改札で取引相手を待っていた。

ここの駅は新幹線の改札口が二つあり、最初の頃はいつもどちらで待っていれば良いものか悩んだが、どの相手も決まってエスカレーターのある南側から出てくる事が多く。

僕は最近は南側で待つ様にしている。

最初から入場券を購入してホームで待てば良いのだが、ウチの会社の取引相手はルーズな人間が多く、僕は何度かホームで待ちぼうけを食らった。

それに南側の改札の前にはコーヒーショップがあり、北側と違って例え取引相手が一本乗り遅れたとしても待合場所のテレビを眺めて過ごす必要が無かった。

そんな理由から僕は今日も南側改札前のコーヒーショップで雑誌を読んで、取引相手を待っていた。

平日だと言うのに旅行カバンを抱えた家族連れが新幹線の改札を通って行く。

僕は比較的恵まれた環境で育ったはずだが両親ともに忙しく、子供の頃の思い出が少ない。

家族連れの子供の嬉々とした表情は少し羨ましく見えた。
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