夏恵
『虫に刺されたみたいだ・・・・』
車に歩む足の親指の付け根に痒みを感じる。
『きっとトモの血は美味しいのよ。』
『ナツエは刺されてない?』
『私はトモに刺された』
悪戯に微笑みながら夏恵は愛らしい答えを返した。
『・・・そういう事聞いてるんじゃないよ。』
夏恵は何も言わず微笑みながら、こちらを見つめた。
車の中は昼の暑さを溜め込んでいて、僕はクーラーを最大にした。
クーラーは生ぬるい風を吹き出したが、時期に本来の役割を取り戻し始めた。