夏恵

『・・・ハイ・・吉岡です。』


『あぁ・・・吉岡さん?・・須藤です。吉岡さん何処ですかねぇ?・・今ぁ?』


『須藤さん、今北側ですか?』


『ん~・・・北側なんですかねぇ・・ここ?』


『改札の近くにテレビあります?』


『あぁ~ハイハイありますねぇ・・・大きいの。』


『じゃぁ・・今僕そっち行きますので待ってて下さい。』


『あぁ~ハイ待ってますぅ。』


以前も電話では何度か話したが、人懐っこい感じの好感の持てる声の主との電話を切り、僕は北側の改札に向かう。

北側の改札へは日当たりの良い西向きの通路を80m程歩く。

午後になって太陽が下り始めるこの時間帯は、この通路の窓越しに差し込む日差しは矢の様に強く、僕の顔をジリジリと音を立てて焼き尽くそうとしている様に感じる。

ここも相変わらずクーラーが行き届いておらず、40m程も歩くと僕のシャツが汗ばむ感じを覚える。
< 82 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop