深夜12時25分の束縛

 メールや電話はしたけれど、その回数も最近では極端に減っていた。


 でも、そんなことを気にする暇がないくらいやるべきことは山積みで。


 寂しかったけど、それをぐっと押し込めて仕事に没頭していた。


 彼のことはちゃんと好きだし、彼も私のことを好きだって思ってくれてるって信じてた。


 次に会った時も変わらず隣りを歩いて、笑い合って、手を繋いで。


 離れていた時間を、ゆっくりと埋めていくんだって思ってた。


 そうやって幸せな時間を過ごせるんだって。


 だけど、今隣りを歩く彼と私の間には僅かな隙間があって、今まで何度も繋いだ手も、宙に浮いたまま。


 微かな不安が胸を過ぎる。


 もしかしたら、彼は私のことなんてもう好きじゃないのかな、って。


 白く染まりつつある道を、1組のカップルが腕を組んで幸せそうに歩いて行く。


 それを見て、トゲが刺さった時のような小さな痛みが胸に走ったけど、気づかないふりをして、ただただ歩く。


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