最後の恋愛
困惑、驚愕、何が起こっているのか理解できない。

っていうか、大麦結婚してないのか?

彼女はいないのか?

修羅場はごめんだぞ!

チンという音とともに、扉が開き、唇も開放される。

大麦はにまっと笑って先に箱から下りた。

な、何だよ何だよ、何か慣れてんな大麦!

お前、さては悪い男か?

ごしっと唇を擦ってその後をついていく。

「ほら。」

ほら、と言われて差し出されたのは大麦の左手だ。

え?

まさかの手をつなぐと?

私の沸き起こる「何で」を打ち消すように、大麦が強引に私の右手を掴んだ。

指を絡めて手をつなぐ。

それは世に言う恋人つなぎだ。

何で、と頭の中で繰り返して、隣を歩く大麦の横顔を見上げた。

大麦はちらっとこっちを見て微笑んだ。

私は、さっと俯いた。

あんまりにもいつもと違う大麦の顔と言葉使いもその態度が、私を女に変えてしまう。
< 10 / 11 >

この作品をシェア

pagetop