OUT

「…形見…」


夢はポツリと呟く。

竜は目を細めて夢の反応を見た。


「そっ形見!!もっと役に立つ物欲しかったけどな」


竜は何が可笑しいのか、ケラケラと笑い出す。


「十分いいじゃないか…竜に勿体ないよ」


夢が軽く嫌みっぽく言うと、竜がより一層笑い出した。


「…さっきからなにが可笑しいんだ?」


「いやー…なんか夢全然笑わねぇなーって。だから代わりに笑ってやってんの。」


……変な奴。


「わ…!!笑えないような状況にいますから!!」



「そんなしかめっつらしてたら、不幸がくるぞー!あーやだやだ」


……現に今すごい不幸だと思いますが。

「……あ…あのさ、」

「………ん-?」

夢は竜から視線をずらして、続けた。


「なんで人が目の前で死んでるのに、お前は泣いたり、怖くなったりしないの?」


夢は嫌みったらしく、ちょっと強く言った。



「…辛い時も、我慢して笑ったら、その場を乗り越えられる…必ず幸せになる……」


「……?」



「昔から、そう言われて育ったから、笑うの…染み付いたんだ。」



竜は夢の方をバッと見た。


「気持ち悪いだろ?」




夢が経験した中で、一番反応に困った瞬間だった。




< 127 / 334 >

この作品をシェア

pagetop