青春ガールボーイ
「遥ちゃん、お弁当は持った?
それと、体操服は?昨日、洗濯に出してたわよねぇ?」
「お母様、私はもう高校生ですよ?
今日から二年生になるんです。自分の事くらい自分でできます!」
勢いよく言うと悲しそうに眉を下げるお母様をみて、私は心の中でため息をついた。
「そうね、もう子供じゃないものね。
行ってらっしゃい、遥ちゃん」
「...行ってきます」
いくら言っても『ちゃん』付けは直らないんだから。
上瀬 遥、高校二年生。
今日は、1年生の入学式なので、ちゃんと服装を整えて行かなくちゃ。
家柄は…
この辺の団地にしては、少し…いえ、かなり良いのかもしれません。
……だけど、私は普通の家に生まれたかった。
小さい頃から好きでもないバイオリンをやらされて、ピアノを弾かされて、
英語教室に、一流塾。
あげくには幼稚園受験、小学校受験までやらされそうになった。
どうにか止めましたけど…。
お母さんは、代々ピアニストの家。
お父さんは、有名企業の社長。
……うん、普通な生活ができるはずないのよね。
私はため息をつきながら、電車を待った。