【壁ドン企画】 あ。もう俺の負けでかまいません。
*




「なぁ」
「なに」
「なんで俺の事避けてんだよ」

いや。ぶっちゃけると俺も実はこいつを避けてはいた。
期間にして一週間とちょっと。

だって、そりゃあ避けるだろ。ずっと、もう二十年近く幼なじみとして、喧嘩友達として、男女の友情の壁? ああ、んなもんないない☆ってノリでやってきたって言うのに……。
ついうっかり……というか、いや、うっかりでもねーんだけど。早い話がやっちゃって。

こいつは、アルコールが入ってたとかそういう理由があったのかもしれない。
でも俺は……ちゃんと正気だった。なのに、だ。

学生ん時、友達との話の中で、こいつには絶対反応しないみたいな話をしたって言うのに、もう見事なまでに……。
あーもう、タイムマシン!とか思いながらも、頭ん中には女の顔したこいつばかりがお花と一緒にぽんぽん浮かぶから、他の女なんか見えなくなる。

こいつの……普段、ケンカ腰でズバズバもの言ってくるデリカシーのない部分とか、無表情で可愛げない部分とか、好き嫌い多くてマック行くといつも俺にピクルスとレタスとポテト押し付けてきておまえもうそれ抜きの注文しろよって思う部分とか。

そういうの全部、可愛くて仕方なく思えてきてしまうのだから、俺ももう末期だ。
俺以外の野郎にピクルスあげてたらなんか嫌だなとさえ思うのだから……もうほんとに。

今まで散々、来る者拒まず去る者追わずでフラフラ遊んできたっていうのに、ついに本気になった相手が常に隣にいたこいつとか……。
本当の愛は常に隣にあった、とか。なんの映画の邦題だって感じだけど。
でも、他のヤツ誰にも、渡したくないって思ったんだから仕方ない。

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