【壁ドン企画】 あ。もう俺の負けでかまいません。
そう考えると、へこたれてた気持ちが負けず嫌いを発揮しムクムクと起き上がり始める。
俺がこの一週間、そして今も十二分に意識しまくってんのと同じくらいに、こいつにも俺を意識させたくて堪らなくなる。
大体あれだ。俺がこいつを好きだとか、もうすげー好き大好きとか思ったのだってもしかしたら一過性のものかもしれないし。
こんなチビで華奢で生意気で、目がくりっとしててすげー光ってて、肌とかもう透けてんの?ってくらいの透明感を放ってて髪とか多分どの花よりもフローラルな香りがするようなヤツを美系モテ野郎の俺が好きになるとか……あれだし。
「もう行くけど。仕事の途中だし」
「え、あ、待てって」
俺がふつふつぶつぶつと考えたり呟いたりしている途中で、急に背中を向けるから慌てて出口を塞ぐようにドアに手をついた。
壁と俺との間に、閉じ込めるように。
一気に縮まった距離にこっちが驚いてたじろぎそうになる身体をぐぐっと押しとどめる。
柄にもなく緊張しながら視線を下ろすと、驚いた瞳とばちっと目が合ってすぐに逸らされた。
驚いた顔可愛いな、とか回復を見せない末期の思考回路で思ってると「なに」と不貞腐れたような声が聞いてくるから答えに困って。
人間、緊張して困った時には一番聞いちゃいけないような事を口にしてしまうもので。
俺も例外じゃなく。
「おまえ、なんで俺に抱かれたの?」