きっと恋、これは恋。



それからさらに5分ほどたった頃だろうか。



遠くにこちらへ向かってくるなにかの姿が見えた。





それはものすごく急いでいて、


全速力でいて。





「…修平。」




俺に声をかけた。




肩を上げ下げして、呼吸を整えようとするひなた。


とても可愛くて、抱き締めたくなる。




その衝動を抑えて、ひなたのもとへと駆け寄った。




「遅すぎ」




頭をぽんっと撫でると、

ひなたの赤い顔にさらに熱が帯びる気がした。





俺は手を差し出す。


そして


「帰ろう?」



そう笑顔で言うと、

ひなたはその手を優しく握り返す。





そんなひなたの顔は、

今にも泣きそうで。


なにか辛いことを抱えているようだった。





だから、


「…なんでも話せよ。

 ちゃんと、聞いてるから。」





隣を歩くひなたに声をかけた。




するとひなたの繋いである手に、力がこもった。



< 108 / 269 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop