きっと恋、これは恋。
「私ね…」
その言葉の先は、
ひなたにとってとても辛いことだったようで。
途中からは涙をすする音でよく聞き取ることができなかった。
ひなたの涙に、動揺はしたが、
どうすればいいのか分からず、
とりあえず…と背中をさする。
少しでも、ひなたの力になりたかった。
でも
「…好きな人がいて、その人のことがすごく好きで。」
この言葉を聞いたときに、
俺は一瞬だけ動きを止めた。
ひなたに…好きな人?
そんなのいたなんて、聞いてない。
…聞きたくない。
耳を塞ぎたくなる思いをぐっと堪えて、
そのあとも話を聞いた。
…初めて聞いた。
好きな人がいるなんて。
それが気になって、
そのあとどんな会話をしたのか、
正直うろ覚えだった。