【短編】5℃。
*─*─*
……その翌日だった。吉田は出張。
「理香、相談があるの」
いつものようにコンビニ弁当(今日は牛丼天丼合わせ盛り680円)にがっついていると、隣の同期が呟いた。
「ふぇ、はひ?(え、何?)」
「あのね……」
同期は頬を赤くしていて。
「ふぁ、はぜ?(あ、風邪?)ほぉうはひふる?(早退する?)」
と尋ねると、
「違うの……あの、吉田さんのこと」
吉田。私は口の中にあったご飯を喉に流し込んだ。ごくり。
「吉田あぁぁっ?? あのバカに何かされたの」
鵜の如く飲んだ、その喉元が痛い。ご飯が食道をゆっくりと降りていくのが分かる。早く胃に落ちるように私はグーでその塊付近をトントンと叩いた。
「違うの。何もされてない」
「じゃあ、なに」
「あの……笑わないで」
同期の困ったような顔に私は不安になる。その可愛い口から聞こえた言葉は“好きなの”というビックリマークが100個も連なるような驚きの台詞だった。