【短編】5℃。


『……告白しようかと思ってる』



*─*─*


「はあ……」


会社からの帰り道。トボトボと歩道を歩いていた。同期には、やめておけ!、と一喝した。あんな口の悪いアホ、付き合ったとしてもイイことなんて一つも無い。同期が惨めな恋をするのをみすみす見過ごすわけにはいかないのだ。そう思って説得を試みたけど、彼女の気持ちは変わらないらしく。


『吉田さんはそんなことないと思う。仮に酷い態度を取られても私は好きだから』


と、はねのけられてしまった。Xデーは明日に設定された。同期は吉田に告白するらしい。なんと明日は奇しくも吉田の誕生日。


学生時代、アメフトをやっていた吉田は背も高く肩幅も広い。口は悪いけど根性はある。課長が5年掛りで口説けなかった訪問先を吉田は毎日通い、1年で仮契約に漕ぎ着けた。外回りでは凄く礼儀正しくて好青年だと認めるけど、それは所詮、奴の外面なのだ。ヅラ……ヅラだ。

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