遥か彼方(短編)

諦めない




「遙。」
「よ。学校どうだった?」
「んー。つまんなかった。」
あ。そうだった。おつかいの品。
「遙!はいチーズ!」

ぱしゃ


「え?なに。インスタントカメラ?」
「うん。おばさんからの頼み事。」
「母さんもやるねー。写真とは…。」
ふふふ。今日はいいものを持ってきたんだよね〜(笑)
「みてみてー!じゃーん!葵2号(笑)」
私が出したのは、おっきなウサギの抱き枕。
「2号って(笑)葵と思えと?」
「うん。寂しいときはこの子で泣きな…なんてね!」

ほんとは私がいないとき、遙が寂しくないようにって買ったの。

「ありがとな。大事にする…。」

コンコン


「遙〜。来てやったぞ〜。」

入ってきたのは、恭介と優子。

「優子!?なんで?」
「私が来ちゃいけない?……それと、なんで私達に相談してくれないの?そんなに頼りない?…ずっと、言ってくれるの待ってたんだけど…。」

優子が、そんな風に思ってたんだ…。

「ごめん。心配してほしくなかったの……。あと、お見舞い来てくれてありがとう。」

「あ、私達すぐ帰らないといけないから。あ、美咲と上野が付き合ったよ。」
「おめでとう!やっぱ。ちょー嬉しい!」
なんだ。美咲もやったじゃん。

「じゃ、帰るね。」
「あ、遥。私も今日は帰るね。」
そう言って私達は部屋を出た。

「あら、葵ちゃん。カメラとってくれたかしら?」
「はい。さっき遙とりましたよー。」
「ありがとう。また暇なとき来てね!」
「毎日来ます!」

ふう。もう少しいたかったなぁ。
私が歩きだそうとしたとき、話し声が聞こえた。


「…遙、抗がん剤の副作用はどう?」
「やっぱ、抜け毛はやべぇ。あと、ときどき吐き気がする。」

やっぱり髪の毛が抜けてるんだ…。

それより、遙が大変なのに、私なんにもできないじゃん…。

「なんかさ、毎日明日死ぬかもって思ったら、治療が辛くなってきたわ……。」
「何いってるの?頑張ってるじゃない。ここで諦めたら葵ちゃんが悲しむわよ。」
「葵か…。そろそろ自由にしてやんねーと。あいつの幸せうばっちまう前に…別れを言おう……。」
「遙!ほんとに後悔し…」

おばさんがなにかいいかけてるとき、私のからだが自然と動いた。

「遙!私は絶対に別れないよ!」


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