遥か彼方(短編)
さよなら
「あー、もう2時じゃん…。ねむぅ。」
今日は遙と遅くまで話していて、宿題をすっかり忘れていた。
「もう寝よっと。」
〜♪
「もう。こんな時間に誰ぇ?」
私は少しイライラしながら携帯をとって電話に出た。
「あ、葵ちゃん!遙がぁ、遙が大変なの!!今すぐ来てぇ!」
え。遙が…?
「わかりました。今すぐ行きます!」
私は急いで支度をして、おかあさんを起こした。
「おかあさん!遙がぁ!大変なのぉ!!」
「え?…ちょっと待ってて、クルマ出すから。」
お願い。何もないように…。
「おばさん!遙は…!」
「それが…もう…。」
え?
それって…
まさか…?
「遙…。寝てないで起きてよ…。ねぇ!」
「葵!やめなさい!」
「おかあさん!離して!」
嫌だよ…
側にいるって、いったじゃん。
まだ言いたいこといっぱいあるよ…。
なんでなの?
私らまだ思い出つくるんでしょ?
1年いけてないよ?
あの思い出の海は
もう一緒に行けないの?
ねぇ、なんで死んじゃったの?
「葵ちゃん。よく聞いて?遙ね、最後、葵、愛してるって笑ってたの…。だから、きっと遙は、葵ちゃんに笑ってほしいんだと思うよ?あとね、これ。遙がいつのまにか書いてたの。」
おばさんが差し出したのは、“葵へ”と書かれた手紙だった。
「…じゃあ、後で読むね…。」
会いたい。
嘘って言ってよ
ホントは生きてるって
ドッキリだよって
また二人で笑おうよ
君がいなくなると、周りの色が無くなるね
真っ暗
「…っ…死なないでよ……また、海行こうよ……。私も愛してるよ……。」