そういうとこ、すき
「みお…は…。」
「ちょっ…!ちょっと聡太!?」

 雪崩れ込むように、澪波に抱きつく聡太だが、澪波にその体重を支えられるはずもない。抱き締められたまま、玄関の外に出そうになって慌てて向きを変えた。外側から虚ろな彼氏を抱き返しながら、なんとか玄関に押し込んだ。ガチャンと鍵をかけると、澪波は背中にあたる玄関のドアの冷たさにゾクッとした。

「お酒…くさくはないけど、…酔ってる?」

 一向に顔が上がらない聡太。何かあったとしか考えられない。

「…聡太?どうしたの?」
「澪波…。」

 気がつくと澪波の顔の両隣には聡太の両手があった。顔を上げてすぐにでも触れ合える距離にいるのに、そうしない聡太はやっぱりおかしい。
 ふぅっと息を吐く音が聞こえた、と思ったら不意に澪波の肩に聡太の頭が乗った。

「…ごめん…。」
「な、…にが…?」

 澪波の右手が、聡太の左手に触れた。
 ―――ない。左手の薬指にあった、約束の証が。
 冷や汗が走るのは澪波の方だ。何のごめんで、自分は一体何を言われてしまうのか。

「ねぇ、…聡太?」

 澪波の声が震えた。
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