そういうとこ、すき
 少しずつ近付く唇にそっと目を閉じる。全身から臭う居酒屋臭と、口から伝わるミントな香りがアンバランスだ。

「口の中、臭くないからもっとキスしていい?」
「…ダメって言ってもどうせ止めないでしょ?」
「澪波のそういうとこ、すき。」

 図々しいけどそれでもやっぱり自分を一番大切にしてくれるところとか、優しい指とか…。

「私も、そういうとこ、すき。」
「なにその甘えたな澪波。この玄関ってシチュだけでも結構キてんのに。」

 ゆっくりと聡太が膝を立てて覆い被さってくる。だからやむ無く澪波は玄関に腰を下ろした。

「手、俺にちょうだい。」

 両手が緩く優しく絡まっていく。そして左手の指まで絡み終わる瞬間に唇が戻ってきた。
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