極妻






私が次に意識を取り戻したのは病院の一室やった。白い天井に広くて豪華な個室。窓からは新宿の高層ビルが見える。そんな部屋のベットに私は寝ていた。


そうか、意識なくしてからここに運ばれたんやな。おそらく組の息がかかった病院や。


「誰かいてる?」


ドアに向けて声をかけると、そこに立っていたであろう鬼塚さんが一礼して現れた。


話によると、私は半日くらい意識がなかったそうだ。


「それで、兄ちゃん、お兄ちゃんは!?」


「小夜子様、まだ起き上がっては障ります」


ベットから降りようとした私を鬼塚さんが制する。言われてみたらまだ目眩がするけど、寝てる場合やない。


「いったい何がどうなってんの?兄ちゃんは無事っ!?」


普段ポーカーフェイスな鬼塚さんが、いつになく険しい顔になった。いまここには私たち二人しかいない。


「昨夜のことは本当に申し訳ありませんでした」


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