極妻
すると鬼塚さんの頬に緊張が走った気がして、なぜか胸騒ぎを覚えた。


「どないしたん?誰か怪我でもしたん?」


「……大倭会の若頭なら先ほど知らせましたので夕方にはみえるかと。それから、風呂場は母屋から離れてますので屋敷の者たちは無事でした。しかし…」


「…え!?今なんて?」


「朔夜様が…」


「……は!?さ、朔夜がなに?」


「大きな火傷を負われて…」


鬼塚さんが目を臥せたとき、全身の産毛がそば立った。その火傷がただ事ではないと伝えるのに十分な表情だったから。


でもなんで朔夜が?なんで尊兄ちゃん今ここにおらんの?


「……えっ?…旦那さんが?…なんで?…大丈夫なん?てか兄ちゃんは…!?」


混乱する私に鬼塚さんは信じられない事を告げた。


「我々が火事に気づいた時すでに風呂場は炎に包まれてました。しかし中に小夜子様がいると知るや朔夜様が…」


「……さ…朔夜が…?」


「炎のなかに飛び込まれて、小夜子様を助けられたのです」


「朔夜が……うちを……助けた……?」


「火事のショックで小夜子様はだいぶ混乱されてるようですね」



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