極妻
10)兄と妹と許嫁・宿命の三人
「……あ…えー…と、」


「いま、なんと?」


鬼塚さんの声がいつにまして鋭い。気のせいやろか?


「いや、それは……今の聞かんかったことにならん?」


「…………」


下手な誤魔化しなんて通じる人やない。


「あーもう、うちって何でこうもアホなんやろ!……しゃあないかぁ。旦那さんには内緒にして欲しいんやけど」


「分かりました。私の胸に留めます」


さっきと逆や、なんて思いながら、なんとなく鬼塚さんの声に緊張が走ったようで気になった。いつも冷静なこの人らしくない。


でも、兄ちゃんに、人にも言うたらアカンと言われないし。何より鬼塚さんは、あの屋敷で唯一信用できるうちの味方。


話してもええやろ。
な?兄ちゃん…?


「うちな、実は朔夜の双子の妹なんやて」


こうして尊兄ちゃんから聞いた話、すべてを教えた。彼はずっとハンドルを握ってるから、どんな表情で聞いてるのかは分からない。


話が一段落つくと、前の鬼塚さんが唾を飲み込んだのが分かる。


「なるほど、そうでしたか。それはにわかに信じがたい話ですね」


「うん。でもお兄ちゃんは嘘つく人やない」


「しかし、それが事実となると、大変なことになります」


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