極妻
「たける…兄ちゃんのこと…?」


鬼塚さんは前を向いたままうなずいた。


「あの男は頭が切れる。切れ過ぎるほどに。恐ろしい男です」


その声から緊張が伝わってきた。

朔夜もさっき同じようなことを言っとったけど、この鬼塚さんを以てもそう言わしめるなんて。


でも二人ともお兄ちゃんを誤解してる。極道とは思えんくらい、ホンマに優しくて純粋な人や。


その証拠にお兄ちゃんは今までこの秘密を誰にも漏らさなかったんやで?


ああ…、兄ちゃんと旦那さんが…、つまり御劔組と大倭会が仲良うなる方法ってないやろか。


兄ちゃんと旦那さんて、意外と気が合いそうなんやけどな……。そしたら全部丸く収まらん!?


ほら兄ちゃんは大人やろ?お子ちゃまな朔夜のワガママも、きっと上手いことあしらえそうやん!


あのふたりが組んだら、ええコンビになりそうなんやけどなぁー。





「小夜子様。この事はくれぐれも組の者たちに内密にしてください。それから、あなたはやはりうちの組を離れた方がいい。あなた自身の為にも」


「……うん、分かった。うちもそう思う」


少しだけ甘い妄想にひたってたけど、鬼塚さんの言葉で現実に戻された。


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