極妻
「証拠はありませんでしたが、昨日問い詰めましたところ、すべて自白してくれました。妹を使って小夜子様に嫌がらせをしたことも」


淡々と話す乃愛さんの言葉を聞きながら、体が震えてくるのが分かった。


この屋敷についた日から、禍々しい空気を感じていたけど、私のまわりは初めから敵だらけやったんやな。


「この者を警察につき出すのも、朔夜様につき出すのも小夜子様の自由です。ただ逮捕されても死刑にはならないでしょうが、朔夜様の場合、命の保証は…」


乃愛さんの話を遮って立ち上がると、私は樋ノ上さんの頬を張っていた。


パンッ…と乾いた音が響く。


「あ、あんたはちょっと脅かしたろ思て、放火したんか知れんけど……それで結果、朔夜があんなことに……」


言葉では言い尽くせないほどの怒りが込み上げてきた。


樋ノ上さんは肩を震わせて泣き出す。涙の筋が幾つも頬を伝った。


「……まさか…あんなことに…なるなんて……申し訳ありません……」


.
< 223 / 303 >

この作品をシェア

pagetop