極妻
「なんで…!?」
兄ちゃんが遠くに行ってしまう。
胸が押しつぶされそうになった。必死に足を進めても、うまく前に進めない。
気持ちだけが空回りして焦る。
すると兄ちゃんは、懐から何かを取り出して私に差し出した。
「………!?」
それは草薙家の家紋が入った小刀だった。
「小夜子、兄ちゃんの頼みや。これで朔夜を殺してくれんか?」
「……な…なに言うてんの…?」
「兄ちゃんな、極道言うても抗争のない世界作りたい。兄ちゃんの夢や。頼みきいてくれんか?」
いつもと同じ、寂しそうで優しい顔で私を見つめる兄ちゃん。
「大倭会と御劔組が統一されれば平和になる。血も流れん。その為にアイツ邪魔なんや」
心臓がドクドク鳴き出した。
血を流さない為に、朔夜ひとりを殺す?どーしたの兄ちゃん!?
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