極妻
「それは……構わへんけど……いまだによう分からへん。ホンマに組や屋敷の人みんなを騙すなんて、出来んの?」


すると朔夜は、美しい顔に陰を落とした。


「形だけっつっても小夜子は俺の嫁だからな。教えといてやる」


「親父が死んだ時、総領の俺は十三だった。いくらなんでもその歳で、組長はねーから当時若頭だった葛木って男が、跡を継ぐことで話しはまとまりかけた」


十三歳なんやったらもっともや。


「けどよ、遺言状があってよ…」


「遺言状?」


「『御劔組の後継者を俺にする』って。後見人も代理も認めねーってよ」


「へぇぇ」


「親父の遺言状は絶対。結局俺が組を継いだが、体裁を保つため、しばらくは拾ってきた奴を西園寺朔夜に仕立てることにした」


確かに、新しい組長さんが十三歳やなんて知れ渡ったら大変なことになるやろな。


「もともと俺の素顔と歳を知ってる奴はみんな首にした。いま、俺もここの離れに住んでるけど、表向きはただの構成員つーことになってる」


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