極妻
悪戯好きの子供の顔でしれっと言う旦那さんに、ぶるぶると手が震えた。
「そ、そんでこんな無謀なことして…だいたい何でひとりで来たん?…何で正体明かさへんかったん?組の人らまわせばあんなヤツら…」
「ガキ共の遊びでんなダセエ真似ができっかよ。だいたい小夜子は『ヤクザが死ぬほど嫌い』なんだろ?俺が死んでくれた方が都合良くね?」
「……そ、それは」
さっきの話、部屋の外まで聴こえてたんやな。確かにうちはヤクザが嫌いや。
家が、親が、尊兄ちゃんがヤクザやなかったら……ってどれだけ願ったか知れん。
「小夜子。俺が組のヤツら引き連れて行けば良かったか?正体明かせば良かったか?だな。そうすりゃ喧嘩に負けることもなかったろーよ」
「…え?」
「でもそれをやっちまったら俺の敗けなんだよ」
「…………」
「ところでいつまで俺の手ェ握ってる気だ?」
「……………!?」
旦那さんのその言葉で、はっと我に返った。走ってきたときからずっと繋いだままやった!
「さっきは城川らに大した啖呵を切ってたクセに、実は震えてんじゃねーか」
「そんなことないわッ!」
からかうような口調にカアッときて、繋いだ手を慌てて振りはらった。
.
「そ、そんでこんな無謀なことして…だいたい何でひとりで来たん?…何で正体明かさへんかったん?組の人らまわせばあんなヤツら…」
「ガキ共の遊びでんなダセエ真似ができっかよ。だいたい小夜子は『ヤクザが死ぬほど嫌い』なんだろ?俺が死んでくれた方が都合良くね?」
「……そ、それは」
さっきの話、部屋の外まで聴こえてたんやな。確かにうちはヤクザが嫌いや。
家が、親が、尊兄ちゃんがヤクザやなかったら……ってどれだけ願ったか知れん。
「小夜子。俺が組のヤツら引き連れて行けば良かったか?正体明かせば良かったか?だな。そうすりゃ喧嘩に負けることもなかったろーよ」
「…え?」
「でもそれをやっちまったら俺の敗けなんだよ」
「…………」
「ところでいつまで俺の手ェ握ってる気だ?」
「……………!?」
旦那さんのその言葉で、はっと我に返った。走ってきたときからずっと繋いだままやった!
「さっきは城川らに大した啖呵を切ってたクセに、実は震えてんじゃねーか」
「そんなことないわッ!」
からかうような口調にカアッときて、繋いだ手を慌てて振りはらった。
.