君がいなきゃダメなんだ。【壁ドン企画】
「先生……まだ私が起こさないとダメですか?」



このままじゃ、私は先生の彼女なんてもってのほか、お母さんになってしまう。

生徒達のレポートを整理しながら苦笑いして言うと、カタッとキーボードを叩く指が動きを止めた。



「雪乃さんの声を一番に聞くと目覚めがいいんです。明日も甘い声で起こしてください」



ちら、とパソコンから私に目線だけを向けた彼の口元は、わずかに微笑んでいる。

……負けた。やっぱり拒否するわけにいかない。


計算とかじゃなく、ごく自然にこっちが嬉しくなることを言ってしまうところも、

中館(ナカダテ)という私の名字が噛みそうで呼びづらいからと、名前で呼ぶことも。

すべてが私の胸をキュンとさせていることを、この人はわかっているのだろうか。



「……わかりました。ちゃんと枕元にスマホ置いておいてくださいね」

「すみません。君がいないと何も出来ない人間なんで、僕」



まったく悪気がなさそうにダメダメ発言をするイケメン准教授は、無造作に散らされたナチュラルヘアをくしゃくしゃと掻き、またパソコンに向かう。

そんな彼に母性本能をくすぐられてしまう私は、やっぱりお母さん確実かしら……。


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