紅い死神は闇を跳ぶ
「誤解だよ。シャン」
同居人、倉内・ジャンク・シャンを玄関先から中へ押し込む。
彼もハーフで、親が高校時代の親友ということあって家族ぐるみで昔から仲が良い。
だからこそ両親も日本で住むことを許してくれたわけだが。
「あ? 何がよ」
「だから、いろいろとあったんだよ。君が思っている事情とは全く違う出来事が、ね」
ヴォルに背を向けていたシャンは振り返り赤茶の髪をかきあげた。
十字架の形をした大きな銀の十字架のネックレスが振動でチャリと揺れた。
振り返った拍子に後ろで一つにまとめている長く細い髪が尾を引く。
「違うって何がよ。朝帰りに乱れた服、香水のニオイも移ってるんじゃね?」
ヴォルの制服に鼻をよせ、くんくんとにおいをかいだ。
止めておいた方がいいという制止の声をかける前に、彼はにおいに気づいたのか顔をしかめ大げさに咳き込み肩をすくめて見せた。
「お前の彼女すごい香水使ってンのな。なんていうブランドか今度聞いておいてくれ」
顔をしかめるのも当然だろう。
制服には埃と廃墟のかび臭いにおいがこびりついているのだから。