紅い死神は闇を跳ぶ
「どした?」
ヴォルの異変に気づいたのか後ろから顔を覗かせたシャンは、右手首をつかみしげしげと眺めた。
「コレもあの不良たちにやられたン?」
「う~ん・・・。たぶん違うとは思うけど・・・。いつ出来たのかさえ分からないし」
シャンの指に少々くすぐったさを覚えながらもヴォルはじっとしていた。
「痛い?」
つーっと確かめるように軽く痕をなぞっている。
ぴりぴりとした痛みがあるけれど、耐えられないほどではなかった。
「そんなに」
「そかそか。でも一応湿布は貼っといたほうが良いと思うぞ」
シャンは右手首を離し、すれ違いざまに肩を叩いた。
見なくても分かる。
きっと顔に微笑を浮かべている事だろう。
「ありがと。そうするよ」
ヴォルは彼に背を向けたまま笑った。
シャンならそれも理解しているはず。
なんたって、小さい頃から一緒に居る幼馴染なんだからね。