紅い死神は闇を跳ぶ
“死神とは決してこの世に存在してはならないとされる者なり


その血肉は腐敗し
その心は硬く閉ざされ
その魂と肉体は永遠とこの世に縛り付けられ
『死』に辿り着くことが出来ない


はるか昔
死神は生をつかさどり生きとし生ける者全てを統べる神であり王であった
他の神も…、その神の臣下だった


他の神が数百年で老い息絶えるのに対し
その神だけは何百年も何千年も生き続けた
――いつまでも美しく老いる事なく


それはその神にとってはあまりにも辛く
他の神々にとっては自分の生命を握られているという恐怖と畏怖の対象だった


その神は最も信頼する神に自分を殺すよう頼み
一度『死』を迎えた


しかし『死』を赦されない神の肉体は全ての傷を癒し魂を連れ戻した


その神はそんな運命を背負い生まれた自分を恨み
その怒りを一時の思いで他の神々や生き物にぶつけた


天は渦巻き地には生ける者たちの無残なる『死』が折り重なるようにして広がっていたという


混沌と化した世界をどうにかしようと神々は総員してその神を捕らえようとした
だが一度怒りを解き放ってしまった神の王には誰一人として敵わなかった


神々は厖大な犠牲を払いその神を鎖で繋いだ
その鎖は神々の欠片の集合体で神の王といえど安易に引き裂けるものではない


神の王は『世界の破壊』という大逆を犯したとして人間の世界へと堕とされた



鎖をその身に巻きつけたまま
『不死』という罪を背負って――”
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