紅い死神は闇を跳ぶ
3月15日。
春先の暖かい風が吹いていた昼間と違い、まだ夜は寒い。
塾帰りのいつもの家路をポケットに手を突っ込んだまま歩いた。
肩にかけているかばんの紐がずり落ちてくる。
もう一枚着てこればよかった、と少し後悔をした。
見慣れた道を進み遠目に見える我が家の人工の灯り目指してただひたすらに歩く。
いつもなら自転車で行くのだが車輪がパンクしていてどうにもならなかったので仕方なく歩きだ。
この道には気休め程度の街灯しかなく、しかもそのほとんどがまともに点いていない。
眼下の暗闇に目を凝らすがぼんやりと物の形が見えるだけで「何があるか」など分からない。
次の曲がり角を曲がれば家はすぐだ。