紅い死神は闇を跳ぶ
「うわっ!」
曲がり角まであと数メートルといったところで何かに躓いてこけてしまった。
かばんの中身が盛大にぶちまけられる。
幸いにも此処は街灯の下なので灯りに照らされてよく見える。
急いでぶちまけた物をかき集め、かばんの中に適当に突っ込んだ。
いつものクセで中身が全てあるかどうかチェックをする。
すると、筆箱が無い事に気がついた。
周囲を見渡すと曲がり角の手前に転がっているのが見つかった。
「あった」
片手でずるずるとかばんを引きずるようにして這って曲がり角まで移動した。
もう少しで手を伸ばせば届く距離になる。
あと少し。
もう少し。
届い・・・・・・た?
「あ?」
あとほんの数センチ先の筆箱をつかむために伸ばした手に、何かがぽたっぽたっ、と落ちてきた。
指をこすり合わせてみると、その液体は水のようにさらさらとしていなく、どろりとした感触だった。
街灯の下で見てみるとそれは真っ黒で、何故か手を下に向けても手にまとわりつくようにして雫が垂れる事は無い。