二十年後のクリスマスイブ
「クリスマスでしょ!桐人の誕生日。本当に自分の事には疎いんだから」

「そうだな…誕生日だっけ、今日から23歳か…有難う!律子。」

「あの……これ、どうすればいい?こっちは、クリスマスプレゼント。これは誕生日のプレゼントなんだけど…」

 事情を把握した律子だが、これだけは渡したかった。

「有難う!…でも、持って帰る訳にはいかない…そうだ!…マスター?」

 桐人は、カウンターの中の新井を呼んだ。

「頼みがあるんだけど…これを預かって欲しいんだ?」

「ああ、お安い御用だ!で、何時まで預かればいいのかな?」

 一度は断られたと律子から聞いていたプレゼントを桐人が受け取った事に新井は嬉しかった。しかし、次の桐人の言葉に驚いた。

「ほんの二十年後のクリスマスイブ迄、御願いします…」

 わざと、桐人は明るく軽く新井に頼んだ。

「二十年だって?!…」

「それと、これも預かっていて欲しいのです…」

 一転して、畏まって桐人は目の前の黒い小箱を手に取り新井に頼んだ。

「訳があって、どうしても二十年後のクリスマスイブ迄、御願いします…」

 新井の口がぎゅっと閉まったままになった。
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