二十年後のクリスマスイブ
 不思議だった。若いせいもあっただろうが、平日は睡眠時間は殆ど無きに等しかったが充実した毎日で疲れ等、感じなかった。それだけ彼女の存在は大きかったからこそ離れてしまった今迄、空虚な半年なのかも知れない。

「迎えに行こう!そして、彼女がそれを受け入れてくれるなら又、彼女の居る道を歩こう…」

 この決意が、二時間も経たないうちに運命の大地震により音を立てて粉々になろうとは桐人の知る事では無かった。



「これ桐人に、似合うだろうな…寒がりだけど面倒くさがって服は用意してるのかな?…今日はクリスマスイブだけど、部屋に居るかしら?…」

 逢いたい気持ちは、律子も桐人に勝るとも劣る事は無かった。時間というのは不思議なもので半年前の出来事を思い出すより桐人への愛しさが今は募っていた。今居るデパートも桐人と一緒によく来た思い出の場所だった。

「これとこれ…それにこれも…」

 クリスマスイブというイベントが律子にも行動を促したのか、堰を切ったように桐人への想いが紙袋一杯に詰められた。
 律子にも運命的な試練が待っているなど思いも無く、膨れた紙袋の重さも感じさせない軽い足取りで桐人の元へ向かっていた。
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