二十年後のクリスマスイブ
 律子が自分の元へ来ようとしている事などつゆ知らずに、運命の大地震は、確実に桐人へと近付いていた。

 クリスマスらしい演出の利いた御馳走が並ぶ食卓だが、桐人の頭の中は律子の事しか考えていなかった。真由美の料理は見栄えは良いが、味には桐人は魅力を感じる事は無く、たわいもない話をしながら食事を済ませた。 律子のマンションへ向かいたい、はやる気持ちからか桐人が素直に今の想いを真由美に話すべく、真顔で見据えて言葉を切り出そうとした、その瞬間だった!

「病院に行ったの今日…」

 先に言葉を出したのは、真由美だった。

「……病院?」

 病院と聞いて桐人は、自分の喉迄来ていた言葉を呑み込んで頭を斜めに傾けた。
「誰かの見舞いでも行って来たの?」
 元気で顔色も良い真由美には、そんな事しか想い浮かばなかった。
「神様って居るんだね。これは、きっと二人へのクリスマスプレゼントだよ♪」
 真由美の勝ち誇ったような満面の笑顔を桐人は初めて見た。
「???……」
 桐人には真由美が何を伝えたいのか全く判らずじまいだった。
「今日は泊まってっていいでしょ…お腹に居るの!二人の赤ちゃん♪」
 桐人が用意した言葉が胃の中で消化した…
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