薬指の秘密
「ううん。大丈夫。彼氏が迎えに来てくれるってさ」

少々申し訳ないような気がするけれど

「へえ、良い人じゃん」

「なんかね」

今回は

「実は過保護だったり?」

「まさか。ドが付くほど淡泊な人だよ」

彼女がいるのに、クリスマスツリーの飾りつけをしたというのに、クリスマスの存在を忘れるような

「そう。どっちにしろ残念」

「しーるふー」

山岸の言葉に首をかしげていると章子が近寄ってきた

酔っていはいるけれど足取りは意外としっかりとしている

「あ、章子、良かったら乗ってく?彼氏が迎えに来てくれるって言うんだけどさ」

「何―!?乗っていきたいけど、うちも連れが迎えに来るわ」

ああ、でもしるふの彼氏は拝みたい

「あ、山岸、あんた今しるふに手出してなかったでしょうね」

今、その存在に気がついた、という様に章子が胡乱気な瞳を向ける

「いやあ、迎えに来てくれる彼氏がいるんじゃ惨敗決定でしょ」

「それもそうね。さっさと諦めなさい」

二人の会話から離れてふと視線をロータリーに向ける

「ねえ、章子、あれ彼氏さんじゃない」
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