薬指の秘密
「いや、言ってない」

言えるわけがない

「海斗って基本怒りの矛先外向かないんだもん」

研修医の時だってそうだし、付き合い始めてからも

「鈍いだの鈍感だの無自覚だのことあるごとにくどくどと。たまにはさ、俺の女に手出すな、とか言ってくれてもいいと思うんだけどさ」

「黒崎先生を落とせるほどの小悪魔が、それを自覚してないなんてそれ以上の罪があって?」

悪いけど、黒崎先生に一票

「第一、違う男が寄ってきたからっていちいち慌てふためくほど馬鹿らしいことがある?そんな黒崎先生見たい?」

つか、想像できる?

莉彩の言葉に無意識に首を横に振る

「だめ。幻滅しそう」

海斗は、あの俺様で自信家でマイペースなところが美点なんだから

「だったら文句言わないの」

「でもさ」

無反応は無反応でやっぱり不安になるものだ

海斗を実は繋ぎ止めておけていないんじゃないかと

繋いだと掴んだと思っていた手は、開いてみたら何もなかったなんてことがあるんじゃないかと
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