恋のはじまり?
「うわっ!?」

「あ、危ない!」


バランスを崩した私は、後ろにあるラックに背中がぶつかる。

その衝撃で、ラックの上に置いてあったファイルがバサバサっと落ちてきた。

咄嗟に、目を瞑った私。


でも、痛くない……?


ゆっくり目を開けると


「……、か、課長!?」


目の前には、課長がラックに手をつき、私を庇うように立っていた。


「大丈夫か?」


課長は私の顔を心配そうに覗き込む。


「は、はい」


その距離の近さに、私の心はドキドキト早くなり、身体も熱くなる。


「よかった」


そう言って、課長はにこっと優しく微笑んだ。

課長は無表情ってわけではないけど、必要以上に笑顔を見せる事はない。

それに、課長自身、自分でもモテる事をわかっているのか、特に女性社員に対して笑顔を見せる事は少ない。

そんな課長の微笑みに、私のドキドキはさらに早くなる。


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