最初の一歩はこちらから ~似たもの同士のささやかな恋の始まり~
「私にしときなよ」

「……マリちゃん?」

 ケイちゃんが不安げに私の名を呼ぶ。

「私、ケイちゃんの整った顔とか身長とか、そんな外見なんて見てないよ?」

 壁から手を離して、ケイちゃんの顔を両手で挟んだ。

「ケイちゃんの優しさ、いっぱい知ってるよ?」

 ねえ、ケイちゃん。

「本当は恐がりなのも、涙もろいのも、寂しがり屋なのも、私、全部知ってるよ?」

 おばあちゃんが亡くなった時、一番泣いたのはケイちゃんだった。
 絶叫マシンやお化け屋敷が大嫌いなのも、ホラー映画が見られないのも、全部知ってる。

 私が赤ちゃんで、ケイちゃんが3歳の時からの付き合いじゃん。

「何を気にしてるのか知らないけど、私なら、もう全部知ってるよ? 私にしときなよ」

 ケイちゃんの身体のこわばりが少しとれた気がして、今度はケイちゃんの肩に手を置き、もう一度、唇を合わせた。

 唇を合わせながら、私はケイちゃんの背中に手を回した。



 ぎこちなくケイちゃんの身体が動き、ケイちゃんの腕が静かに私の背中に回された。
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