独り歩き。




携帯を開くと、根岸クンからメールが来ていた。


【あんなこと言ってごめん。俺、お前のこと、本気で好きだった。でも、俺じゃお前を幸せにできないってよくわかったから。

俺、応援してるから。頑張れよ。】


メールを見て泣きそうになる私の頭を、先輩は優しく撫でてくれた。




しばらくして、校舎を出ると、外は真っ暗だった。


「昔、おばあちゃんがね、『つくしはきっと、たった一人に深く深く愛されることになってるんだよ。』って言ってたの。それって涼のことかな?」


帰り道、手を繋ぎながら私は先輩に問いかける。


「ぜってぇ俺だよ。」


繋いだ手をさらに強く握って、彼は無邪気に笑った。


独り歩いた道のりは、決して無駄ではなかった。


苦しみも。


悲しみも。


寂しさも。


辛さも。


痛みも。


この人に出会うために。


愛されるためにあったのだと。


そう思えるから。


私はたぶん、誰よりも幸せ者なんだと思う。





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