私の欲しい人
彼の眉間に皺が出来ている。


「ラム酒、飲んでるんですね」

「うん。結構旨いよ」

「それって飲んだら薬みたいに、傷口とか塞がりそうですか?」

私の曖昧な言葉に、ようやくこちらに顔を向けた三島さんと、視線が絡み合う。


三島さんは静かに笑った。

……多分、お酒のせいだろう。



「私もそれ、貰っても良いですか?」

私は壁際のマグカップを指差した。

「ん? ああ、優花もハタチ過ぎたんだっけ?」

「もう、21歳も終わりますよ」

「……そうだったっけか」



この人の中ではいつまで経っても、私は親友の小さな妹のまま。

これから先も永遠に続く。

そんな無限のループに恐怖を感じた途端、体が独りでに動いていた。


私は気怠そうにマグカップを持ち上げた三島さんの右腕を、ガシッと左手で掴む。

真っ白なシャツの上からでも、彼の筋肉質な腕を感じた。

「……優花?」

三島さんの戸惑いを含む声を無視した挙げ句、もう片方の右手で壁を突いた。
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