私の欲しい人
狭い事務室の中に、ドンッと大きな音が響き、マグカップの中のラム酒が跳ね上がる。

私と彼の間に、更に濃いラム酒の香りが拡がった。


普段なら、150cmをちょっと越えた程度の小さな私が30cm以上も身長差のある三島さんに、こんなこと出来ないけれど。


彼が椅子に座っているのを良いことに、覆い被さるよう体を預け……私は目を見開いたままの、彼の唇を奪った。


普段の三島さんだったら避けられただろうに。


「ゆ…う……」

私の名を呼ぼうとした、彼の唇を食みながら自嘲した。



ずっと好きだったくせに、告白出来なかった彼は馬鹿な人だと思うけど、その馬鹿をずっと好きな私も、相当な馬鹿だ。


ラム酒に酔ってる三島さんは、小さな溜息を吐いた後、私の舌を受け入れた。

その溜息は、自分の気持ちへなのか、私の気持ちへなのか、それすら分からない。でも。


その溜息すらも飲み込みたい、私は救いがたい。




明日になったら、彼はきっと後悔するのだろう。


愛想の無い人だけど、本当は心優しい人だから、胸を痛めるかもしれない。




それでも。

今夜、あなたが欲しい。


私の傷はラム酒なんかじゃ、塞がりそうに無い。




-- End --











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