あの頃、今頃。
クーラーの効いてる体育館では、もう何十人もの新入生がパイプ椅子に腰掛けていた。
私達2人も、空いている後方の席に腰掛ける。
「しかしまあ。入学式に寝坊って」
学校指定の鞄から化粧ポーチを取り出し、グロスをぬりながら莉奈は笑う。
「楽しみで眠れなかったんだって」
「天音ってさ。小学生の時から遠足とかに毎回寝坊してるよね」
「もう、莉奈!」
からかってくる莉奈の肩を軽く叩き、2人で軽快に笑った。
私の名前は山本天音。
今年で16歳になる、高校1年生。
背が低くて目立った特徴もない、ごくごく普通の学生。
そして今、私の隣にいるのが岡崎莉奈。
小学生の頃からずっと一緒にいる、私の1番の親友。
背は私よりも少し低くて、瞳の色が黒というよりも茶色に近い。