色気のない僕ら
思ったより柔らかかった。
あんな一瞬の出来事でそんなことを思った俺を。
誰か殴ってください。
「バカ」
「はぁっ⁈ 」
「ほんとバカ」
「なんだそれ!」
唇を奪われた挙句、今日何度目かになる「バカ」をいただいた俺。
ほんとなに⁈ なんなの⁈
俺、何かした⁈
いやしたけどさ…。
なんて、頭の中でノリツッコミにも似たことをしてるけど。
リアルに何がどうなってるのかさっぱりわからない。
「あのなぁ…っ‼︎」
「ドキドキした?」
「うるせぇな!したよ!」
「キュンキュンは?」
「言わなくても察しろ!」
「…じゃああんたも察してよ」
…察していいなら察するよ。
今の今まで怒って追撃バカをくれた彼女。
今度は目ぇ潤ませて真っ赤な顔してる。
もう俺、都合よく自惚れるからな。
そう思うが早く。
力なく俺の腕を掴んでいた彼女の腕を引き、彼女ごと腕の中に引き寄せた。