色気のない僕ら
「…もっと意識すれば?俺も男なんだけど」
「やめ…」
「あーでも俺には無理なんだっけ?お前をキュンキュンさせること」
「なっ…!!」
ガバッ。
俺の言葉に慌てたように俯きかげんだった顔を上げた彼女と目が合う。
「…え?」
な…ちょ、ちょっと待て。
なんだこれ。
なんだこの感覚。
さっきまで飲んでたアルコールのせいだと思いたい。
顔を上げた彼女が…可愛く見えた、なんて。
染まる頬に潤んだ目。
力なく動く困ったような表情。
なんなんだよ、これ。
こいつ、こんな顔してたっけ?
「なんつー顔してんだよ…」
「失礼ね!」
「いやいや、そーゆー意味じゃ…」
俺が掴んでいる手首は細くて、ちょっと力を入れたら折れてしまいそうで。
そこに繋がる腕や肩も、俺なんかより全然細い。
…ヤバい。
意識しろ、なんて言った何秒か前の俺。
バカだろ。
意識させられたのは俺の方じゃねぇか。
ドキっとさせられた。
掴まれた。
止まらない。
止められない。
…止めたくない。