色気のない僕ら

「こっち向け」

「やだっ!」

「なんでだよ」

「バカっ!空気読め!」

「はぁぁ⁈」





でもその言葉の意味は、いくら俺でもわかった。

だって、視線を逸らし続けた彼女の顔が。

頬は真っ赤に染め、目元は光る涙目だったから。





「…なぁ」

「…なによ」

「ちゅーしていい?」

「っ‼︎…バ、バカじゃないのっ⁉︎」





…なんだよ、もう。

可愛すぎる。





「…なぁ」

赤く染まった頬に指を滑らせる。

ビクッと身体に力が入って俯く彼女。





「…なぁって」

頬を滑らせた指をそのまま彼女の唇に寄せていく。

唇に触れるか触れないかのところで指を止めると。

彼女は自身の唇を真一文字にキュッと結んだ。





俺の指の動きに意識全開してるのがわかる。

それすらもう可愛くて、可愛すぎて。

俺の顔が緩みそうになる。

…こーゆーの、キュンキュンするって言うんだろうな。

彼女の言ってた“ドキドキとは違う。胸の奥が跳ねる、締められる”の意味が。

なんかわかった気がした。





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