色気のない僕ら
止めた指を再び動かして今度は彼女の唇の端に触れた。
自分のものとは違う、柔らかい感触を指先に感じた。
目の前の彼女はさっきまでとは違い。
唇だけじゃなくて目までキュッと力を入れて閉じている。
…ヤバい。
うん、これはヤバイ。
元々そんなつもりじゃなかった。
さっきも冗談半分で言っただけ。
なのに。
あー、どうしよ。
マジでしたい。
この唇に触れてみたい。
指先でなぞる彼女の唇はピンク色でぷるぷるで。
どう考えても誘ってるようにしか見えなくて。
そんなことを勝手に思ってしまう俺も相当頭が沸いてると自分でわかってる。
…あぁ、もう。
変な負けず嫌い意識なんて出すんじゃなかった。
後悔先に立たず、なんて言葉が頭をよぎる。
でももうどうしようもない。
「…ごめん」
彼女にも聞こえたかどうかわからない。
多分聞こえてない。
そのくらい小さく小さく呟いて。
彼女の目を自身の手のひらで覆った。